経営戦略の一環としてブランディングに着手。高品質な価値が「伝わるデザイン」でシリーズ累計69万個*販売

プロジェクト概要

フットグルーマーグランは、浴室で足を洗いながらマッサージができる世界で初めて開発されたフットブラシだ。特に、ブラシの先端部分に研磨剤が塗布されているのはサンパックの特許技術である。研磨剤により足裏にほどよい刺激があり、血行促進やリラクゼーションなど、健康への効果もデータで実証されている。GRAPHは2017年から同商品のブランディングを担当。その功績が評価され、現在も継続して科学的根拠のある既存商品のリニューアルや商品開発のブランディングも手掛けている。
www.sunpac.co.jp/lp/footgroomergrand/

課題

  • 安価な追従商品・模倣商品・類似品との視覚的差異化の方法を模索していた。
  • 効果効能に見合った価格付けをしたいと考えていた。

GRAPHからの提案

  • 競合他社に対して圧倒的な高級感とまねが出来ない印刷加工技術で、知的財産を守りながら価値を伝えていく。
  • 新シリーズの価値を正当に主張するため、値上げする。
  • 初披露となる展示会は、新シリーズの商品と同じ世界観で統一。ブースや映像、ユニフォームなど、GRAPHがトータルでデザインした。

結果

  • 大手百貨店をはじめ家電量販店など販路が拡大
  • テレビ番組をはじめ、メディアで数多く取り上げられ、注文が殺到。知名度は一気に向上し、売り上げも伸長した。
  • 自社商品の全体像もブランド化していく取り組みが始まった。

スタッフクレジット

北川一成/吉本雅俊/村部悠蔵/高島功/大原史剛

クライアントインタビュー

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青山祐二郎氏
株式会社サンパック 代表取締役社長

Q: GRAPHにブランディングを依頼した決め手は。

GRAPHさんが生み出すデザインは、単に美しいだけではなく、経営的な視点と販売的な視点を含んだデザインであることが分かりました。それが依頼の決め手の一つです。あと、兵庫の本社にある印刷工場を見学したとき、隅々まで掃除が行き届いていて驚きました。それも大きな決め手となりました。来客のために慌てて掃除したようなレベルじゃないんです。それは、私たちも工場を持つメーカーなので分かる。

例えば、外に置いてある室外機もほこりをかぶっていないんですよ。掃除から分かるのは、モノづくりに対する真剣さとこだわりのレベルの高さ。GRAPHさんなら机上のデザインだけでなく、実際のモノをつくり出すなかで、フェアで現実的な仕事に導いてもらえると実感できたので、安心して一緒に仕事ができると思いました。

Q: ブランディングに着手して良かったことは。

私たちの希望の一つは、適正な価格付けをお客様に認めてもらうことでした。それがブランディングによって実現できたと思えたのは、高価格帯を扱う百貨店でも価格面について、すぐにご理解いただけたからです。

今回の改良商品は性能の向上に伴う原価向上もあり、改良前の商品より2,000円ほど値上げしました。改良したとはいえ、価格を上げることは不安でした。改良前の商品は、当然ながら販売していただくお店との価格交渉で駆け引きがあったからです。

しかし、改良商品は、百貨店のご担当の方々に機能が向上したことを説明する前から、商品を見ただけで「適正価格ですね」と言われたんです。商品価値というのは機能だけでなく商品のカラーリングやパッケージの世界観など、トータルで「価値」なんだと実感しました。商品機能の説明の前から受け入れられたということは、デザインが既に「価格以上」の価値を示していたのかもしれません。

Q: 初披露となった展示会2017年9月の「東京インターナショナル・ギフト・ショー」のブースはとても印象的でした。

これまでの展示会では、新商品はもちろん、既存商品も一緒に展示していました。しかし、このときの展示会では、世界観をつくりこみ、展示する商品も新シリーズの一品のみに絞りました。意図は理解できるものの一般的な展示会で見られる方式ではなく、値上げの時と同じ様に大きな不安がありました。

しかし、実際はこれまでの展示会の反響とは全く違った。予想以上に、注目していただけました。狙いどおり、スタイリッシュで高級感のあるデザインによって、エビデンスのある商品の信頼性がうまく伝わったのだと思います。特に印象的だったのは、これまでほとんど関わりがなかった男性バイヤーが何人も立ち止まってくれたこと。販路も確実に広がりました。

Q: 今後の展開は。

今、私たちが強化していきたいことの一つは、自社のオンラインショップの売り上げ向上です。Webサイトでの展開は既成概念をとっぱらい、思い込みもなくしてゼロから考え直しています。そういった柔軟な考えに自信を持てるようになったのは、GRAPHさんの影響です。

私たちの商品は、日常で使うものです。そんな何気ない「ケ」の日常を潤いと喜びのある「ハレ」の日に進化させるような提案も、考えていきたいと思っています。

分析

フットグルーマーグランが安価な健康雑貨のカテゴリーから脱却できたのは、機能性の高さが伝わるように、世界観を統一してブランド化したからだ。既成概念にとらわれないデザインによって商品の価値が正確に伝わるようになり、狙いどおり販路は拡大。知名度も一気に向上した。知的財産を守る方法として、パッケージデザインで高度な印刷加工を活用するというアイデアも、印刷会社がルーツであるGRAPHらしい提案だ。

ブランディングのプロセス

サンパックは、20年以上前に、浴室で使用する「足裏専用のフットブラシ」を初めて発売したパイオニアだ。同社は、家庭用品やパッケージ什器などの企画・開発から販売まで手掛けるメーカーで、大阪府吹田市に本社を、兵庫県丹波市に樹脂製品製造の自社工場を持つ。

1996年に初のオリジナル商品「足洗おっ!」を開発。フットブラシという市場を開拓し、2012年にブラシの先端に研磨剤を塗布した「フットグルーマーマニキューレ(以下、マニキューレ)」を発売した。ブラシの先端に研磨剤を塗布する技術は、サンパックが4年ほどかけて独自に開発したもので、特許も取得している。

研磨剤により足裏にほどよい刺激があり、血行も促進。継続して使用することで、角質も除去され、冷え性の改善やリラクゼーション効果も期待できる。健康へ効果は大学の研究機関などで実証されており、データも公開している。

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ブラシにたっぷりお湯をかけ石鹸や液体ソープをこすりつける。風呂の椅子に座り、ブラシに足を乗せて1分ほど前後に動かし、足裏をマッサージする

見た目がそっくりな後発の類似品との差異化が課題に

フットブラシ市場の活性化に伴い、マニキューレと見た目がそっくりな類似品が多く出回るようになった。素材も使い心地も性能も全く異なるが、店頭では違いが分かりにくい。しかも、類似品の多くは3000円以下と安価だった。マニキューレは当時、6980円(税込)で販売していたため、「高い」と言われることも少なくなった。

高品質な商品を開発している自負があるからこそ、サンパックは安価なイメージの健康雑貨というカテゴリーから脱却したいと考えていた。そんな現状を打破するために開発したのが、ブラシの長さや塗布する研磨剤の量を増した新シリーズ「フットグルーマーグラン」だ。類似品との差異化を図るために経営戦略から見直し、GRAPHはブレーンとして参加。ブランディングも手掛けることになった。

色と印刷加工で独自性を際立たせ

GRAPHの強みは、デザインからものづくりまで一貫してブランディングを請け負えることだ。ルーツが印刷会社で、特殊印刷や高品質なものづくりに定評があり、世界の名だたるブランドの仕事を手掛けきた豊富な知識と経験がある。フットグルーマーグランのブランディングは、そんなGRAPHの持ち味を存分に発揮している事例の一つだ。

フットグルーマーグランは、「商品の形は既存のまま」という制約があった。その条件を基に、GRAPHは商品の色やパッケージデザインで付加価値を伝えることを提案。ブラシ先端を、研磨剤部分を科学的根拠がイメージできる未来的な蛍光色にすることで、他社にはない独自技術を際立たせようという考えだ。

透明なパッケージの側面に施した幅広のメタリックグリーンの箔押しは、美しく仕上げることが難しく、まねされにくいという特徴がある。高度な印刷加工で知的財産を守るという戦略で、安価な類似品との違いが直感的に伝わるように、上質な印象に仕上げている。

メーカーとデザイン会社が一体となって取り組むモデルケースに

フットグルーマーグランは、初披露となる展示会で注目を集めることに成功。テレビ番組で紹介されたことをきっかけに知名度が一気に向上した。商品やパッケージだけでなく、展示会の場を含めて、フットグルーマーグランの世界観を統一。それが成功の要因と言えるだろう。一時は生産が追いつかないほど注文が殺到したという。シリーズ累計販売数は、69万個を突破している。

この功績が評価され、GRAPHによるブランディングは継続。毎月1回定例会を開催し、サンパックの社長をはじめ、製造部門や営業部門の役員や担当者とともに、新商品の開発や既存商品のリニューアルを行っている。具体的には、売り上げや営業戦略を共有しながら、世界観がぶれないように、プロダクトの形や機能、プロモーションの方法などを議論しているという。GRAPHは、縦割の部門同士をつなげる横軸のような役割もある。

フットグルーマーグランのように健康を促進する科学的根拠のある商品をブランド化する動きもある。2019年1月に発売した「ドレミーレグラン」は、「キュートボディ」という既存商品に「温めて使用する」という新機能を加えたもの。機能や色、形のほか、「心地よい眠りにつながる」という切り口でプロモーションを展開することなど、定例会の参加メンバーとともに一緒に開発した。メーカーとデザイン会社がコンセプトを決める段階から一体となって商品開発に取り組む、モデルケースとも言えるだろう。

編集・執筆:西山薫(デザインライター)