覚えやすく口コミで伝播する仕掛けを含む秀逸なネーミングを開発。知名度を一気に高め、注目を集める

プロジェクト概要

「変なホテル」は、世界一生産性の高いホテルを目指し、ロボットが接客をする世界初のホテルだ。GRAPHは、長崎のハウステンボスに隣接する第1号店の立ちあげから参画。ブランディングを担当し、ホテルのネーミングをはじめ、コンセプト立案、ロゴマークのデザインなどを手掛けた。

課題

  • 生産性向上のためにロボットを活用することから、当初は「スマートホテル」という名称だった。「スマート」という言葉は風化する恐れがあり、ロボットの活用は他社が追随する可能性もあるため、他社がまねできない本質的な名称を検討した。

GRAPHからの提案

  • 進化するロボットとともに常にスマートであるために「変わり続けることを約束するホテル」というコンセプトを考案。覚えやすく口コミでの伝播も狙い、ホテル名はコンセプトを略した「変なホテル」とすることを提案した。
  • ロゴマークもネーミングと同様、世界初のホテルにふさわしく記憶に残るデザインを考案。

結果

  • プレス向けの内覧会には60社以上100人近くが参加し、海外メディアからは11件取材のオファーがあった
  • 各メディアはハウステンボスに新しいホテルが誕生するというニュースだけでなく、コンセプトとセットで報じ、その名が一気に広まった。

スタッフクレジット

北川一成 / 錢亀正佳

クライアントインタビュー

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森康弘氏
ハウステンボス株式会社 変なホテル 支配人

変なホテルブランドサイト
変なホテル宿泊予約サイト

Q: 変なホテルという名称について。初めて聞いたときの率直な感想を聞かせてください。

前任の支配人は「本当にこの名称でいいのか、半信半疑だった」と言っていたように、私も正直、驚きました。しかし「変わり続けることを約束するホテル」というコンセプトのおかげで、オリジナリティの追求と生産性の向上のために様々なチャレンジをしています。例えば、無人のコンビニやバーをいち早く導入したり、客室の部屋割りをオリジナルのプログラムで自動化したり。コンセプトの通り、トライアンドエラーを繰り返しながら進化し続けています。

Q: 宿泊客からの反応はいかがですか。

「変なホテル」の意味をよく聞かれます。ロボットが接客をする世界初のホテルであり、だから「変わり続けることを約束するホテル」というコンセプトを伝えると、どのお客様も「なるほど!面白い」と納得されるのが印象的です。マークのモチーフについての質問も多いんです。ホテル名やマークの意味を知りたくなるホテルは、ありそうでないですよね。覚えやすいだけでなく、お客様とのコミュニケーションのきっかけになっています。

分析

「変なホテル」のネーミングが秀逸なのは、ホテルのコンセプトと一緒に記憶される上、口コミで伝播する仕掛けが含まれていることだ。奇想天外な名称は、1度聞いたら記憶に残る。そして、なぜ、そんな名前なのか知りたくなる。さらに意味を知ると、誰かに伝えたくなる。狙い通り、記者発表後には各メディアはホテル名とコンセプトは一緒に報じ、その名は一気に広まった。北川一成のアーティスティックな感性と、論理的なコミュニケーションの設計が見事にマッチした好例だ。

ブランディングのプロセス

本質を伝えるネーミング

ロボットや先進技術を駆使してスマートであり続けるためには「変わり続ける」必要がある。ハウステンボスが黒字化できたのは、エイチ・アイ・エス(以下、HIS)の澤田秀雄会長兼社長が仕掛ける様々なアイデアによって変わり続けてきたからこそ。ハウステンボスが培ってきた変わり続けるためのノウハウがコンセプトになれば、他社が追随してきたときも差異化になると考え、「変わり続ける」というキーワードを軸にネーミングを検討。「サービスの質を落とさず、価格をリーズナブルにするために生産性を高めていく、ホテルの本質を伝えることができると思った」(北川)

その考えを軸に考案したのが「変わり続けることを約束するホテル」というコンセプトと、コンセプトを略した「変なホテル」という名称だ。プレゼン後、HISでは議論にもなったようだが、「ロボットが接客する世界初のホテルなので、変わった名前のほうが印象に残る」と澤田会長が採用を決断したという。

日本らしさが無意識に伝わるデザイン

ロゴマークもネーミングと同様、記憶に残るデザインを目指した。マークは、変わり続けるというホテルのコンセプトを基に、日本の国蝶の「オオムラサキ」をモチーフにデザインした。オオムラサキは、日本で最初に発見された蝶で世界初のホテルとして誕生するストーリーとも親和性がある。また、蝶は卵から幼虫、サナギ、成虫へと完全変態する昆虫であり、「変わり続けることを約束する」というコンセプトとも重なる。そのことから、ホテルの象徴としてふさわしいと考えた。無意識に日本らしさが感じられるように、大和絵に描かれている「すやり霞」という雲や「竹」のイメージも取り入れている。

ロゴには既存のフォントは使用せず、文字一つひとつを新たにデザインした。古典的なニュアンスに偏り過ぎず、「今の日本らしさ」が伝わるように設計した。

編集・執筆:西山薫(デザインライター)