リブランディングから10年で上場へ。牽引力となった社名刷新とロゴマーク

プロジェクト概要

福岡・天神に本社を構える家賃保証会社「ニッポンインシュア株式会社」は2014年4月に社名を変更。ネーミングを含めたリブランディングをGRAPHが担当した。地方から日本を代表する会社へという思いを込めたネーミングと、家賃保証の目指す姿を表現したロゴマークを開発。あえて社名を入れないノベルティの効果は社員の意識にも変化をもたらし、リブランディングから10年を目前にした2023年、遠い将来にいつかと目指していた上場を果たした。

課題

  • 福岡の不動産業界では広く認知され業績も伸びていたが、全国への展開も視野に入れていたため社名変更を検討していた。

GRAPHからの提案

  • 全国展開の計画を基に、日本を代表する保証会社に成長するよう思いを込め、新社名に「ニッポンインシュア」を提案。「日本」を表現する英語は、「JAPAN」ではなく自分たちのアイデンティティをグローバルに宣言するため「NIPPON」の表記に。発音した時の印象の残りやすさも考慮した。
  • ロゴマークは黄金比によるふたつの長方形を重ねたデザインを提案した。内側の長方形は企業として守るべき資産や保証。外側のフレームには丸みを持たせ、資産を成長させながら守る柔軟性を表した。
  • 実態はあるが普段は存在を感じさせないこと。それが保証の在り方のひとつと捉え、実態のない色=鏡(鏡そのものには色はない)と考え、高級感や安心感を与えるメタリックシルバーをコーポレートカラーに選んだ。
  • ノベルティとして毎年制作していた既製品のプラスチック製うちわは老舗の京扇子に、同じく既製品の卓上カレンダーは毎年デザインが変わるオリジナルカレンダーに変更。それまで大きく記載していた社名を最小限にしてデザイン性を高め、量より質を重視した。

結果

  • 名刺や封筒だけでなく、年賀状やエントランスなども統一したデザインで刷新したことにより取引先の不動産会社や物件オーナーに、知的で信頼のできる会社として認知された。
  • ノベルティのクオリティと希少性を高めてこだわることで顧客満足度が上昇客観的な評価を得ることで、社員がデザインの効果を実感した。
  • 社名に「ニッポン」と入れたことで、全国展開への思いが社員にも共有された。顧客とコミュニケーションを重ねる中で思いがさらに浸透し、上場への牽引力を担った。

スタッフクレジット

北川一成 / 吉本雅俊 / 榎本ちひろ

クライアントインタビュー

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徳岡拓郎氏
ニッポンインシュア株式会社
取締役 営業事業部 部長

            

Q: リブランディングをGRAPHに依頼されました。その理由を教えてください。

弊社は、福岡を拠点に2002年「エム・サポート」という名称で設立されました。年々、取引先や保証契約件数が増えてきたことから、2014年に社名の⾒直しを検討することになりました。その際、当時の代表であった⽮野が「カンブリア宮殿(※2013年10月放送)」で北川一成⽒のことを知り、強く印象に残っていたことが依頼のきっかけでした。
紹介されていた「脱サラファクトリー」という会社の事例は、デザインだけでなくネーミングにも独自の視点と発想がありました。また、世界的なクライアントを持つ同⽒が、我々のような⼩規模な企業でも受け入れていらっしゃることを知り、メールでのお問合せから何度かのやり取りを経て、依頼を受けていただきました。

Q: 印象に残っていることは。

北川⽒から「社員のみなさんも、新たな社名を考案してみてはいかがでしょうか」という提案を受け、20名程度の全社員で、約100案の候補を出し合ったことです。その中から⽮野が選定し提案をしましたが、「ニッポン」という発想は一切ございませんでした
東京オリンピックの開催が決定した背景もあり、音の響きと合わせ北川氏の「ニッポンインシュア」が採⽤されました。

Q: 完成したものを見た感想は。

ロゴマークをご提案いただいた際、スクリーンにiPhoneのようなものが映し出されました。フレームの中に何か⽂字が⼊るのかと思ったら「以上です」と⾔われ、シンプルすぎることに驚きました。「これでいくのですか?」と⽮野に確認すると「分からない世界には⼝を出さん」という返答がありました。
彼は他のことに関してはトップダウンな⼈でしたが「ここをこうしてくれ、と⾔ったらお願いした意味がない」と、北川⽒の提案をすべて受け入れました。その信念と決断⼒には心から感銘を受け、今でも意志を引き継ぎ、GRAPHさんに全てをお任せしております。

Q: どんな効果がありましたか。

洗練されたロゴマークとスタイリッシュな社名は、家賃債務保証業界に存在する不透明で近寄り難いイメージを、信頼に足るポジティブなものへと転換してくださいました。
シンプルすぎると感じたロゴマークも印象に残る要素となっており、箔押しの名刺は今でもお客様から良い評価をいただいております。その評価が社員の自信へと繋がり、社内へとブランドが浸透していったように感じております。
また、ノベルティについても⼤量に配布していたうちわを少量生産の京扇⼦へと変更いたしました。「これは北川氏が一つ一つ絵入れをしてくださったもので、大切なお客様だからこそお渡ししています」と感謝の気持ちを一緒にお伝えすることで、弊社の名前が広まっていきました。
ロゴひとつ、ノベルティひとつから⽣まれるコミュニケーションがスマートなイメージを醸成し、お客様に安心感を提供することに成功しました。結果、賛同者が増え売り上げにも繋がっております。
この一連の成長は、GRAPHさんのリブランディングの成果だと考えております。

分析

ネーミングやデザインが会社の発展を促したのは、顧客の興味を引き、会話を生み出すものになっていたからだ。なぜ「ニッポン」なのか。なぜ、ふたつの長方形を重ねたもので、メタリックシルバーなのか。ノベルティについても、カレンダーに社名がないのはなぜか、扇子に書いてある絵柄は何を表現しているのか…。一般的に営業マンが自社のプレゼンテーションをする際、顧客に話を聞いてもらうのには苦労が伴うものだ。それが、GRAPHが提案した名刺やノベルティによってコミュニケーションが誘発され、顧客が自分から質問してくれる状況が生まれた。そのポジティブな喜びに直接触れることで社員の意識が高まり、業績の向上につながり、結果的に上場への牽引力を担ったと考えられる。

編集・執筆:高木健太(ライター)