サバイバルフーズ
株式会社セイエンタプライズ

日本の長期保存食市場をけん引するサバイバルフーズ、リニューアル後の売り上げは30%増。非常時の健康と安心を考えるブランドへと進化

プロジェクト概要

セイエンタプライズは、25年間という超長期保存が可能な備蓄食「サバイバルフーズ」の製造卸元。1978年から、日本で長期保存食市場を開拓してきたパイオニア的存在だ。5年間保存できるサプリメントも開発し、2021年9月から販売を開始した。GRAPHはブランディングを担当し、ロゴマークやパッケージのデザイン、ネーミング、知財戦略などを手掛けている。

課題

  • サバイバルフーズの特徴は、25年間の超長期保存という「機能性」と「おいしさ」を両立させていることだ。しかし、リニューアル前のパッケージからは、「おいしさ」が直感的に分かりづらかった。
  • 適正価格でありながら、価格が高いと思われることが少なくなかった。
  • 備蓄食の「SURVIVAL FOODS」は一般名称なので、商標登録ができなかった。

GRAPHからの提案

  • 非常時に救援物資が届くようになり、少し落ち着きを取り戻してくると、被災者は「おいしいものを食べて安心したい」という思いが芽生えてくるという。そのことからGRAPHは、「おいしさを伝える表現も、安心感をもたらす」と考え、備蓄食には珍しいエレガントな印象のパッケージデザインを考案した。ロゴは古典的な欧文書体をアレンジし、オリジナリティを高めた。
  • 商品名を変更せずに商標登録する方法を検討し、「SURVIVAL」だけで商標を取得。SURVIVALのみ商標であることが伝わるように、ロゴの後に®を入れている。パッケージにはSURVIVAL とFOODSの文字間を多めに取りつつも、ロゴとして不自然にならないようにデザインした。

結果

  • 2008年のリニューアル後の売り上げは、約1.3倍に伸長。展示会での反応も良く、小売店との商談もスムーズになった。その結果、取り扱い店舗も増加している。
  • 累計販売数は3000万食以上。1000以上の官公庁や自治体、病院、企業の備蓄食として採用されている。
  • 5年間長期保存できるサプリメントの開発を機に、サバイバルフーズは備蓄食のブランドから、「非常時の健康と安心を考える」ブランドへと進化。

スタッフクレジット

北川一成 / 錢亀正佳

クライアントインタビュー

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平井雅也氏
株式会社セイエンタプライズ 代表取締役社長

セイエンタプライズ コーポレートサイト
防災のセレクトショップ セイショップ

            

Q: GRAPHにパッケージデザインのリニューアルを依頼したきっかけは。

2007年頃、特にサバイバルフーズの売り上げが伸び悩んでいたわけではなかったのですが、将来のためにブランドの再構築を検討していました。そのとき、たまたま「日経MJ」に北川さんのインタビューが掲載されているのを見かけたんです。
インタビューの見出しは「売れるデザイン」で、気になって読んでみると、事業承継のことや事業を拡大させたエピソードなど、共感できることが多々ありました。それをきっかけに興味を持ったのですが、GRAPHさんとは何もつながりがなかったので、連絡先を自ら調べて問い合わせをしました。

Q: ブランディングの効果について、どのように感じていますか。

まず、2008年にパッケージデザインを一新しました。売り上げは順調に伸長しています。特に印象的なのは、商談がスムーズになったことです。商品の価値や本質をパッケージデザインで表現すると、コミュニケーションのスピードが加速することを実感しました。
その後、1978年から続いていた米国企業との代理店契約を解消。2018年より、永谷園に製造を委託して国内製造に切り替えたタイミングで、パッケージをさらにリニューアルしました。このときのリニューアルのポイントは、商品写真を大きくしたことです。
国内製造に切り替える前は、米国でラベルの印刷をしていたので、色のコントロールが難しかったんです。国内製造を機に、ラベルの印刷もGRAPHさんが担当されることになったので、おいしさをより強調するために、写真を大きく使用することになりました。展示会では遠くから見ても目立つようになり、「なんか、かわいい」と言われる機会が増えました。

Q: 5年間長期保存できるサプリメントも開発し、「サバイバルフーズ サプリメント」という名称で販売しています。

サプリメントの商品化が決まった時点で、売り方やパッケージデザイン、商品名をどうすべきか、すぐにGRAPHさんに相談しました。サバイバルフーズブランドとして販売することは、GRAPHさんから提案されたことです。サプリメントは「非常時の健康を考える」というコンセプトだったので、これまで培ってきたサバイバルフーズのブランド力を生かすべきだと助言していただき、決めました。
サプリメントの販売を機に、サバイバルフーズは「非常時の健康と安心を考えるブランド」として進化させていき、新たな商品展開なども検討していきたいと思っています。

Q: 高級感のあるデザインが印象的です。コストについては、どうお考えですか。

サプリメントは箔押しを施した高級感のあるパッケージなので、確かにコストはかかっています。社内でも議論になったのですが、私たちが販売する商品は一般的なサプリメントとはコンセプトが全く異なります。サバイバルフーズでデザインの価値を実感していたので、最低限投資すべきだと判断しました。
GRAPHさんは、パッケージデザインのことだけでなく、商品の在り方やブランドづくりを一緒に考えてくれるので、ざっくばらんに何でも相談しています。デザインだけでなく、印刷や加工までトータルでお任せすることができ、なおかつクオリティが高い。私たちには欠かせないパートナーで、これからも末永くお付き合いしたいと思っています。

分析

セイエンタプライズは、5年間長期保存できるサプリメントを開発した。それを機に、サバイバルフーズは25年間超長期保存できる「備蓄食のブランド」から、「非常時に健康と安心を考えるブランド」へと進化。サプリメントは、「サバイバルフーズ サプリメント」という名称で販売している。
こうしたブランドの拡張を図ることができたのは、「非常時に安心感をもたらす」という、サバイバイルフーズの本質的な価値を軸にしたブランディングを行っているからだ。経営資源となるブランドをクライアントと共に生み、育てている理想的なブランディング事例の一つだ。

編集・執筆:西山薫(デザインライター)