ヒロシマ・アピールズ 2025
公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)
プロジェクト概要
公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)による社会貢献活動「ヒロシマ・アピールズ」の2025年度ポスター。
「ヒロシマ・アピールズ」は、1983年から続くJAGDAの社会貢献活動であり、原爆投下の日である8月6日に向けて、広島から平和へのメッセージを世界へ伝えることを目的としている。
2025年は被爆80年の節目にあたり、単なる記録や祈りではなく、「いま」を生きる人間として、未来に何を伝えるべきかという根源的な問いがテーマとなった。
ヒロシマ・アピールズ2025 ウェブサイト(JAGDA)
[制作にあたって]
『ヒロシマアピールズ』のポスターでは、亀倉雄策さんの『燃え落ちる蝶』(1983年)や早川良雄さんの『子供と鳩』(1986年)が特に印象に残っています。学生時代に拝見し、その独特な構図や日本らしさに大いに触発され、いつか自分もこんなポスターを作りたいという思いを抱きました。これまで広島を訪れたことはなく、修学旅行も長崎で、平和祈念像を訪問しましたが、中学時代、担任の先生が原爆について自ら調べ、毎日のホームルームで語ってくださったおかげで、戦争の悲惨さと平和の大切さを学びました。
1983年の亀倉さんのポスターを見たときは、こんな作品を作りたいと思い、2013年に葛西薫さんの作品を見た際にはすぐにご本人に連絡を取り、その素晴らしさをお伝えしました。さらに、2020年に渡邉良重さんの作品を拝見したときも、もし自分が制作したらという思いが一層強まりました。
私は戦争を直接経験しておらず、父も幼かったため出征等もしていません。しかし、曽祖父母からは戦時中の厳しい現実や子どもを失った悲しみを聞き、さらに日々の食事に対しても厳しく戒められました。また父からは姫路での空襲体験などの幼い頃のエピソードを聞かされ、戦争の現実とその恐ろしさを実感しながら育ちました。さらに、ウクライナ情勢や中東の対立など、ここ数年、戦争というものを肌で感じる中で、平和の大切さを改めて痛感しています。戦争は人が引き起こすものですから、防ぐことができるはずであり、平和な環境があってこそすべてがうまく進むと信じています。
1983年から抱いていた平和ポスターへの気持ちは単なる理想ではなく、現実を見据えた目標へと変わりました。今回、ポスター制作の機会をいただけたことは大変光栄であり、自分の内面をしっかり整理し、表現したいと考えています。
(北川一成)
スタッフクレジット
北川一成