Chatwork カルチャーブック
Chatwork株式会社

常識にとらわれない印刷・加工でバリューを体現、遊び心のあるカルチャーブックを制作

プロジェクト概要

ビジネスチャットツールを展開するChatwork(チャットワーク)は、社内向けにカルチャーブックを制作した。ミッション・ビジョン・バリュー、クレドなど各冊子をとじるバインダー形式で、中身を追加したり差し替えたりできる。紙や印刷・加工にこだわったオリジナルデザインで、遊び心・チャレンジ・変化など、Chatworkのバリューを体現している。GRAPHはオリジナルのバインダー制作をはじめ、各冊子のプリンティングディレクションを担当した。

課題

  • Chatworkはバリューを刷新し、その浸透を目指してカルチャーブックを制作していた。手元で何度も見返してもらえるように、紙や印刷・加工、製本までこだわり、質の高い“捨てられないもの”をつくりたいと考えていた。
  • コンセプトは「バリューを体現するカルチャーブック」。遊び心・チャレンジ・変化・誠実さなどチャットワークのバリューの体現を目指し、中身を追加したり差し替えたり、各社員がひと手間加えられるバインダー形式にすることは、あらかじめ決まっていた。

GRAPHからの提案

  • Chatworkらしさ=バリューを体現するために、市販品ではあまり見かけない加工で独自性を高めることを提案。
  • バインダーを手にした瞬間、市販品との違いや質の高さが直感的に伝わるように、表面はしっとりした質感に仕上げた。また、バインダーの表紙がパタンと心地良く開き、見た目も美しくなるように、折り目部分はVカット加工を施した。
  • バインダー自体の紙もオリジナルで制作。グレーの厚紙2枚にChatworkのコーポレートカラーである赤い紙を挟んで貼り合わせた合紙加工で、シンプルなデザインにアクセントをつけた。
  • バインダーの色に合わせて、各冊子の紙や色づかい、色調なども提案。予算内に収まるように安価な紙も選定したが、その紙の特徴を生かす印刷・加工を提案。特色をつかったり、印刷方法や色の濃淡を調整したりすることで、Chatworkらしい創造的で遊び心のある表現にした。

結果

  • Chatworkがつくるものは、「コンセプトを基に、ひとひねり効かせたクオリティーの高いものにしよう」という共通認識を周知する機会にもなっている。

スタッフクレジット

村部悠蔵 / 坂上谷直久

クライアントインタビュー

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一戸等氏
Chatwork株式会社
ピープル&ブランド本部 BX部
デザイナー

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新免タカノリ氏
Chatwork株式会社
ピープル&ブランド本部 BX部
マネージャー

            

Q: 印刷・加工をGRAPHに依頼しました。その理由を教えてください。

(一戸氏)ミッション・ビジョン・バリューの“バリュー”を刷新しました。その言葉を社員に浸透させるためには、自社のHPに掲載するだけでなく、手元に置いて何度も見返せる冊子もあったほうがいいと考えました。

日頃、オンラインでのコミュニケーションが中心なので、印刷物を制作する機会はあまりなく、たいていオンデマンド印刷を活用していました。しかし、今回はバリューの浸透をはじめ、インナーブランディングのためのツールなので、質の高さにもこだわり、バリューを体現するチャレンジングなものにしたいと考えました。そこで、紙の選定や印刷・加工、製本まで伴走していただけるパートナーを探していました。

GRAPHさん以外にも、いくつかの印刷会社に相談していました。その中でGRAPHさんに依頼したのは、カルチャーブックのコンセプトや中身に関心を持ってくれたからです。

相談の時点で、バインダー形式にすることや、予算や部数、納期などを伝えたところ、どの会社も条件にあった仕様や加工方法を提案してくれました。しかし、GRAPHさんからのお返事は「カルチャーブックのコンセプトやマインドなどを共有いただかないと本質的な提案ができないので、まず話を聞かせてほしい」といった内容でした。

たしかにその通りですよね。予算や条件は大事なことではありますが、それ以上にコンセプトや内容に興味を持ってくれるGRAPHさんとなら面白いものを一緒につくれるのではないかと思い、依頼することにしました。

GRAPHさんは北川一成さんが率いるデザイン会社で、ブランディングも手掛けています。長年にわたって培ってきた美的センスがあり、色々なことを相談できる安心感があったことも決め手になりました。

Q: 制作過程で印象に残っていることは。

(一戸氏)予算の兼ね合いで、冊子の紙のグレードを落とすことになりました。プリンティングディレクターの坂上谷さんは、それをネガティブに捉えるのではなく、この紙だからこそできる色使いや表現を提案してくれたことが、とても心強く、印象的でした。

「この紙を使うなら特色の単色で表現すると、全体のトーンやクオリティを保つことができる」といったアドバイスは、とても勉強にもなりました。ものづくりの面白さも堪能でき、純粋に楽しかったです。

バインダーの折り目はVカットという加工が施されていて、市販品のバインダーにはない繊細で美しい仕上がりに満足しています。しっとりした触り心地がすることや、バインダーの角をRにするデザインなども、「Chatworkの人間らしさや温かみが伝わるように」と、GRAPHさんから提案していただいたものです。“Chatworkらしさ”を客観視する機会にもなりました。

Q: 完成したものを見た感想は。

(新免氏)単なる冊子ではなく、バリューを体現したデザイン性の高いカルチャーブックを手にとって見る、“もの”と”行動”がもたらす強さをあらためて感じています。

(一戸氏)“もの”があることで、“体験”をつくることができるんですよね。

(新免氏)GRAPHさんからの提案もあって、社員にはバインダーに中身をセットしない状態で配布しました。そうすることで、冊子を綴じる順番を考えたり、中身に目を通したりする機会にもなると思ったからです。実際、配布後、社内のチャットは、とても盛り上がっていました。

最近、オフィスを移転し、Web以外の“もの”をつくる機会が増えています。カルチャーブックは、ものづくりにおけるクオリティーについて考え、その規範のような存在になっていくといいなと思っています。

例えば、ノベルティをつくるときも、単に社名のロゴを入れるだけでなく、コンセプトに基づいて丁寧に考えていったほうが、Chatworkらしいものになりますからね。

(一戸氏)実は、表紙の右上に英語でメッセージが入っているのですが、完成後、単語の綴りにミスがあることに気づきました。それを修正するためのシールをつくることになったのですが、そのときも、坂上谷さんは「だったらパソコンの天板に貼りたくなるような、かっこいいステッカーにするのはどうですか」とポジティブに捉えて提案してくれました。

(新免氏)修正シールさえもChatworkらしい、遊び心のあるデザインになりました。
そもそもステッカーを貼る作業って、楽しいですよね。各自シールを貼ることで、カルチャーブックを手にとる機会も増え、結果オーライだったと思っています。
バインダーに綴じる冊子は、Chatworkの進化に合わせて刷新し、差し替えていく予定です。今後、進化のたびにGRAPHさんに相談できたらいいなと思っています。

分析

この事例は印刷案件で、ポイントは予算内で遊び心のある独自のデザインを実現していることだ。刷新したバリューを体現するカルチャーブックになるように、バインダーは市販品にはない印刷・加工を施し、質の高さを追求した。その裏側にあるのが、印刷・加工を熟知しているからできる巧みな予算配分と、プリティングディレクションだ。

バインダーでとじる冊子は、Chatworkの進化とともに刷新し、差し替えていく計画だという。そこで、GRAPHは長く使いつづけるバインダーに最も予算をかけることを提案。そうすると自ずと冊子の紙や印刷の予算は少なくなるが、決してチープな印象になっていない。むしろ、明るく遊び心のあるデザインで、Chatworkらしさが際立っている。

それは、全体のトーンがずれないようにプリティングディレクションを行い、紙の特性に合わせた色づかいを提案し、印刷方法なども微調整したからだ。

30年以上にわたって蓄積してきた“ものづくり”の経験値を基に、ネガティブな要件もポジティブに変えていく。その発想の転換をクリエイティブに反映できるのは、印刷業がルーツのGRAPH独自の強みだ。

編集・執筆:西山薫(デザインライター)