累計3億杯以上、販路も拡大、類似商品続出の危機を乗り切った直感的なデザイン

プロジェクト概要

こやま園の「丹波なた豆茶」は、無農薬で育てた丹波産のなた豆100%で作る健康茶だ。こやま園の小山伸洋社長が、なた豆の効果・効能や栽培方法の研究を始め、2003年に商品化した。GRAPHはブランディングを担当し、2013年にロゴマークとパッケージデザインのリニューアルを実施。その後、発売した新商品のパッケージデザインも担当した。

課題

  • オンラインショップでの販売に加え、高級スーパーやホテルなど、国内外での販路拡大を目指していた。
  • こやま園の「丹波なた豆茶」の効果・効能が浸透し、安価な競合商品が増加していた。
  • 後発の競合商品の多くが「丹波なた豆茶」のパッケージデザインに類似しており、差異化の必要があった。

GRAPHからの提案

  • 競合商品とデザインが類似しないように「手書き風の筆文字」は使用しない。
  • 海外でも販売していたので、禅のような機能的で無駄のない「今の日本らしさ」を感じるデザインを目指す。
  • 「100%なた豆を使用」「有機栽培」といった特徴は、こやま園にとって当然のこと。そのため、あえて淡々と表示する。

結果

  • 海外の展示会での評判やリアクションが、これまで以上に良くなった。パッケージに興味を持って立ち寄ってくれる人が、格段と増えた。
  • 高級スーパーをはじめ、ホテルやレストランなど販路が拡大。売り上げは毎年伸長しており、累計3億杯分以上販売している。

スタッフクレジット

北川一成 / 村部悠蔵

クライアントインタビュー

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小山伸洋氏
有限会社こやま園 代表取締役社長

こやま園ブランドサイト
こやま園オンラインストア

            

Q: GRAPHにブランディングを依頼したきっかけは

実は、別のデザイン事務所にロゴマークのリニューアルを依頼していました。けれども、ピンとくるデザインが上がってこなかったんです。そんなタイミングで、北川さんと出会い、会食する機会がありました。そこで意気投合したんです。弊社のスタッフが、北川さんの活躍を知っていたこともあり、ロゴマークとパッケージデザインのリニューアルをお願いすることにしました。

Q: 提案されたデザインを見たときの率直な感想は。

最初は社内でも賛否両論あり、私も戸惑いました。しかし、心がざわっと動くということは、それだけインパクトがあるという証だと思ったんです。北川さんから「全員が良いというデザインは、たいてい無難なものが多い」という説明を聞き、納得できました。時間が経つほど愛着がわき、今はとても気に入っています。

Q: 顧客からの反応はいかがですか。

展示会では、ブースに立ち寄ってくれる人が格段に増えました。「ロゴマークをショップで見たことがある」と、お客様から声を掛けられることがあります。特に海外の展示会では、パッケージを褒めていただくことが多いんですよ。パッケージのリニューアルと同時に営業活動も本格化し、紀ノ国屋や成城石井などの高級スーパーでの取り扱いも始まり、レストランのドリンクメニューやホテルなどの客室のお茶に採用されるなど、販路は拡大しています。

分析

どの業界においても、売れている先発商品のパッケージデザインは、後発の競合商品にまねされることが珍しくない。なた豆茶の市場を開拓した「丹波なた豆茶」は、まさにその典型的な事例である。
「丹波なた豆茶」がヒットすると、似たようなデザインの後発商品が次々と登場。「丹波なた豆茶」は先発商品であるにも関わらず、店頭で目立ちにくくなっており、間違って後発商品を購入してしまう顧客もいたという。
そんな状況を打破するために、パッケージデザインのリニューアルを実施。GRAPHは縦組みと横組みが混在する、モダンデザインの文法をあえて無視したデザインを考案した。特徴は「丹波なた豆茶」らしさを北川が咀嚼し、独自の身体感覚で抽象化したこと。唯一無二のアートのような表現=アート資産であるからこそ、表層的にまねようとするとバランスが悪いデザインになる。
そのため、オリジナリティを保つことができ、市場の中でひと際目立つようになった。ブランド力の強化に貢献し、国内外での売れ行きも好調だという。

編集・執筆:西山薫(デザインライター)