1ページでわかるGRAPHのこと

vol.10
商標登録できない案はプレゼンしない。
15年以上前から貫くGRAPHのスタンス

押本 泰彦氏

押本特許商標事務所

おしもと・やすひこ●1977年、慶応義塾大学工学部管理工学科卒業。1983年に弁理士試験合格、弁理士登録。1996年〜1997年に特許庁商品・サービス国際分類改正委員会委員、1997年に弁理士会商標委員会 委員長を務めた後、1998年に押本特許商標事務所設立。2003年と2005年に産業構造審議会不正競争防止法小委員会委員を務める
押本特許商標事務所

商標登録は事業戦略の一環

依頼者に提案するロゴマークやネーミングの商標登録について、プレゼンテーションする前にGRAPHさんからお問い合わせがあります。GRAPHさんは商標登録の可能性が低いものは、依頼者にプレゼンしていません。GRAPHさんと知り合ったのは、今から15年ほど前ですが、商標登録に対するスタンスは当時も今も同じです。たしか、初めてのご相談は、セイエンタプライズさんの「サバイバル」の商標登録についてだったと思います。

そもそも、新たに創作したデザインであれば、著作物として認められます。しかし、当然のことではありますが、企業の商品やサービスとして商売に当該デザインを使用するとなれば、第三者の商標権等と抵触していないか事前確認が必要です。

一般的にはプレゼンをして依頼者が採用を決めた後、商標登録の確認をすることが多いと思います。しかし、その時点で「抵触するため使用できない」と判明すると、またデザインの選定からやり直すことになり、とても非効率的です。新しいサービスを始めたり、商品を発売したりした後、他社から商標権の問題で警告を受けるといったケースも、珍しいことではありません。

企業にとっては当該事業が中断し、信用を損なうことになります。だからこそ、GRAPHさんは「商標登録の可能性が低いものは、依頼者にプレゼンしない」というスタンスを貫いているのです。

つまり、GRAPHさんが提案するロゴマークやネーミングは、安心してビジネスに活用ができると言えるでしょう。

商標登録をするとき、依頼者の事業戦略を把握しておく必要があります。事業領域を拡張する可能性や、海外での展開の有無なども踏まえ、どの分野(商品・役務の区分)に商標権を取得するか考えていくからです。いざ、事業領域を拡張しようと動き出したとき、当該分野では商標登録ができないといった事態の発生も、良くあるケースです。

デザイン戦略を外部からアシスト

私の立ち位置は、GRAPHさんのプレゼンがうまくいくように外部から商標専門家としてアシストすることです。長年のお付き合いなので、商標登録が難しそうなデザインの場合も、「こういった方向性であれば、登録できる可能性がありますよ」と、GRAPHさんのテイストを壊さない範囲でご提案することもあります。

GRAPHさんは、脱サラファクトリーさんの「五色の浜雫 自凝雫塩(おのころしずくしお)」の商品化に尽力されました。その後、「RARE SALT(レアソルト)」も商品化しています。

「RARE SALT」という商品名は、一般名称とみなされる可能性が高いものでした。それに対してGRAPHさんからは、これまでの知財戦略の経験を踏まえ「一般名称とみなされそうなネーミングでも、商標登録できている他業種の事例がある。なんとか突破できないか」と相談されました。

もちろん私も「一般名称的だから無理」と簡単に諦めたりせず、GRAPHさんと共に突破の可能性を探り、拒絶理由に打ち勝ち登録することができました。

北川一成さんをはじめ、GRAPHさんが優れていると感じるのは、過去の常識にとらわれず、インパクトのある斬新なものを生みだし続けているところです。依頼者の本質を見抜き、ビジネスの役に立つロゴマークやネーミングを開発する。そんなGRAPHさんのデザイン戦略がさらに大きく花開いていくように、私はこれからも客観的な立場でお手伝いしていきたいと思っています。


海水から千分の一しかとれない希少な塩「五色の浜雫 自凝雫塩(おのころしずくしお)RARESALT」。GRAPHは、ネーミングとパッケージデザインを担当した

      

編集:西山薫(デザインライター)