1ページでわかるGRAPHのこと

vol.9
ビジネスに作用するGRAPHの
デザインとUIの共通点

清水幹太

BASSDRUM テクニカルディレクター

しみず・かんた●東京都生まれ。東京大学法学部中退。バーテンダー・トロンボーン吹き・DTPオペレーター・デザイナーなどを経て、独学でプログラムを学んでプログラマーに。2005年12月より株式会社イメージソース/ノングリッドに参加し、本格的にインタラクティブ制作に転身、クリエイティブ・ディレクター / テクニカル・ディレクターとしてウェブサービス、システム構築から体験展示まで様々なフィールドに渡るコンテンツ企画・制作に関わる。2011年4月より株式会社PARTYチーフ・テクノロジー・オフィサーに就任。2013年9月、PARTY NYを設立。2018年、テクニカルディレクター・コレクティブ「BASSDRUM」を設立

刹那的にかっこいいだけではない

今から10年以上前、私はグラフィックデザイナーとして働いていました。その頃から、GRAPHのことは知っていましたが、何がどう優れているのか、当時はよく分かっていませんでした。グラフィックデザインを、色や形、レイアウトなど、いわゆる狭義で捉えていたので、ゴールが分からず、善しあしも見失っていました。

その後、ひょんなことからプログラミングの仕事をするようになり、グラフィックデザイナーからプログラマーに転身。2011年にPARTYを設立し、コミュニケーションデザインという概念が自分自身の中にインストールされると、デザインの解釈が一気に広がってきました。

デザインというのは、視覚的なことだけではなく、アイデアや戦略、コンセプトなども含まれる。広義でデザインを捉えられるようになり、あらためて世の中を見渡してみると、GRAPHのデザインが際立っていました。

グラフィックデザインに詳しくない人たちにも情報が届くように、心をザワっとさせる仕掛けを盛り込み、行動や購買などの成果につなげる。GRAPHのデザインは、刹那的にかっこいいだけではない。人間の根っこの部分にアプローチするデザインなのだと気付きました。

例えば、北川さんがデザインした名刺は、名前や住所といった情報を伝えるだけではない機能があります。名刺を通じて、人と人がどうインタラクト(交流)するか。自然と会話が生まれたり、記憶に残したりするように、紙や印刷、レイアウトなど総合的にデザインされているのだと思います。

それはある意味、名刺のUI(ユーザーインターフェース)です。そういう視点でGRAPHの仕事を見ると、デジタル領域のクリエイターにとっても学びが多く、参考になります。

デザインもデジタルも突き詰めると経営にたどり着く

デジタルの仕事においてUIのデザインは、とても大事にしています。一定のセオリーがある専門領域なので、グラフィックデザイナーが関与し過ぎると、うまくいかないことも少なくありません。

しかし、北川さんとはUIの話が自然とできるんです。理由は、GRAPHのデザインがUIと共通する部分があるのと、社会構造(コンテクスト)からデザインを考えているからだと思います。

きっと北川さんは、グラフィックデザインを社会構造から突き詰めた結果、経営にたどり着いたのでしょう。それは、テクノロジーの分野でも同じことが言えます。

例えば、企業のデータベースやシステムの効率化を図るとき、そもそも、なぜこのシステムが必要なのか企業の方々に問いかけていきます。様々な角度から突き詰めていくと、ブランドの在り方や企業のビジョン、経営方針などにたどり着くのです。

テクニカルディレクターは、簡単に言えば「話せる技術屋さん」。ビジネスを動かすための構造の設計段階から携わることで、より本質的な課題解決ができると考えています。

この新しい概念をつくるとき、参考にしたのが、プリンティングディレクターという職業です。プリンティングディレクターも、単に言われた通りに刷るのではなく、デザイナーが表現したいことに合わせて印刷方法を提案していると思います。アウトプットするものが確定した段階で依頼されると、非合理なオーダーも少なくない。それは、印刷もデジタルも同様です。

私は多くのグラフィックデザイナーと仕事を一緒にしていますが、北川さんは稀有な存在だと感じています。印刷の価値をデザインで高め、今はビジネスの領域でも活躍されている。デジタルの領域にも屈託なく挑んでくれたら、きっと今までにない面白い表現が生まれるのではないか。ひそかに期待しています。

GRAPHがブランディングを担当しているハナマルキ「追いこうじみそ」のWEB AR。BASSDRUMが、テクニカルディレクションを担当した 
https://www.hanamaruki.co.jp/oikoujimiso.html

      

編集:西山薫(デザインライター)